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HOME >  リハビリ >  教えて! 回復期リハ 8 退院支援とは、何を、どうすることなのか?

教えて! 回復期リハ 8 退院支援とは、何を、どうすることなのか?


退院支援とは、具体的に、何を、どうすることなのか?

さて、前回は「回復期リハ病棟でリハビリをすると、どこからどこまで改善するのか?」
についてお話ししました。

これまで何度も登場した「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書」によれば、
2019年のデータでは、入院時から退院時までで得られるFIM利得は、23.0点でした。
そして、このFIM利得の殆どがFIMの「運動項目」であり、「認知項目」の改善は乏しいのでしたね。


改善しやすい動作・改善しにくい動作・出来てほしい動作
では、FIMの運動項目13項目の全てが平均的に伸びるのかというと、どうではありません。
入院当初から得点が高い、つまり自立に近い項目もあれば、入院当初から得点が低く、
訓練しても伸びにくい項目があるのです。

このデータは「回復期リハビリテーション病棟の現状と課題に関する調査報告書」には
詳しく記されていませんから、筆者の私見も含まれていますが、「食事」や「整容」は比較的自立しやすく、
「浴槽・シャワー」(つまり入浴動作)、「階段」(つまり階段昇降)は自立しにくい(=要介護状態のまま)
項目であると思います。

そしてもう1つ、大切な視点があります。
患者さんの退院に際して、「ご家族が患者さんに期待する動作・できていてほしい動作」です。
それは何だか分かりますか?

それは、「トイレ・排泄に関する動作」です。これはリハビリ的・老年医学的な知識ですね。


これらのポイントから、自宅退院しやすい退院支援とは…

「食事」や「整容」は比較的自立しやすく、逆に「入浴動作」や「階段昇降」は介助が必要になることも多い
→ 介護保険を使って「入浴介助」や「デイサービスでの入浴」を導入する
→ 階段昇降をしなくて済む生活環境を整える(逆に、構造的に階段昇降が必要な環境には退院しにくい)



ご家族が患者さんに期待する・できていてほしい動作は「トイレ・排泄動作」である。

→ 居室とトイレから近い場所に移する・トイレまでの導線を確保する・便器への移動をラクにする手すりを設置する、
  などによって、ご本人とご家族のトイレ動作への負担を軽減し、またトイレの失敗を減らす。



介護保険を利用した「家屋改修」
自宅退院に際しては、介護保険を利用して「家屋の改修」が可能です。
これは一定の金額を上限として、必要な個所に手すりを設置したり、段差を解消するために
必要な処置を講じたりするために利用可能です。

ということは、いざ自宅に退院しようという場合には、介護保険の申請によって「要介護度」が
判明している必要があり、この介護保険の申請から判定結果が判明するまでに、
1か月から1か月半を要する場合が多いと思います。

例えば大腿骨の骨折後など「運動器疾患」の患者さんがリハビリした場合の「リハビリ病棟での平均入棟期間」は、
このシリーズ「教えて!回復期リハ3」でもご説明したように、平均54.9日でしたね。

ということは、運動器疾患の患者さんがリハビリ病棟に入棟した際に、
介護保険が未申請だったら、入棟と同時に介護保険の申請を行うべきである
、ということですね。
それでも工事の発注や家屋改修終了までには更に時間がかかるため、
退院時期に工事が間に合わない場合も少なくありません。

こうしたちょっとした知識を上手に使い、患者さんの退院支援を円滑に行うことが大切ですね。