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その熱について、熱く語ろう 5


その熱、「誤嚥」が原因かも?

医療機関や施設入所者でも、高齢者に多く見られる「誤嚥」
特に冬場になると、コロナやインフルエンザを疑うケースもあり、
医療者であれば「発熱」に対して過敏になってしまいますよね。
筆者の専門は「老年病科」という高齢者専門の内科なのですが、
大学病院勤務時代は、緊急入院となる患者さんの半数以上が誤嚥性肺炎でした。
高齢者の発熱の原因として、やはりそれだけ「誤嚥」によるものが多い、ということだと思います。
そこで今回は、嚥下機能が低下している患者さんを多く診療してきた筆者が、
患者さんの発熱から誤嚥を疑うときは どのような時なのか、
「誤嚥」を疑うべきコツをお伝えしたいと思います。

ごく軽度の誤嚥なら、無症状~微熱のみ、ということもある

高齢者が「誤嚥」するといっても、いきなり重度の、ひどい誤嚥をするケースは稀です。
脳血管疾患など、急激に嚥下機能が低下する疾患であれば、
急激な嚥下機能の低下を認めることもあるかと思いますが、
加齢に伴って嚥下機能が低下する場合には、誤嚥の兆候は徐々に見られるものです。
特にその初期であれば、少量の、散発的な誤嚥のみで、発熱がない場合や、
あってもごく軽度の場合もあります。

ですから散発的に37℃程度の微熱がみられる場合には、
誤嚥の初期症状である場合もある
と認識しておくとよいと思います。

少量の「誤嚥」でも、高熱になることがある
嚥下機能が正常である場合には、ごくわずかな水分でさえも誤嚥しない、といわれています。
逆に、1ml 未満の唾液でも誤嚥すると言われており、少量の唾液でも、誤嚥することがあるのです。
1ml って、ホントに少量ですよね。ですからスプーン1杯程度の水分でも、
誤嚥して気管支や肺にまで到達した場合には、少量であっても発熱する場合があります。
時に38℃を超えることもあります。

少量の「誤嚥」の場合、SpO2は低下しないこともある
誤嚥するとSpO2が低下すると考えてしまいますが、そうとは限りません。
数ml程度の誤嚥なら、誤嚥しても広く肺の中に拡がらないため、
SpO2の低下をきたすような低酸素血症を認めない場合も多く存在する
のです。

「誤嚥」による発熱の際に血液検査をしても、検査では「異常なし」のこともある
様々な感染症が蔓延する可能性のある冬場には、発熱を繰り返している患者さんでは
病院を受診して検査を実施するケースもあると思います。
しかしせっかく受診したのに、血液検査では大した異常も検出されず、
レントゲン検査をしても「問題ありません」といって、
薬も処方されずに帰宅、となるケースもあると思います。
上記の通り、少量の誤嚥でも高熱になることがあるので受診するのですが、
SpO2が低下しない程度の誤嚥であれば血液検査でも異常はなく、
またレントゲンでも異常を検知することは難しいのです。
同様の経験をお持ちの場合、みつかりにくい誤嚥、
「不顕性誤嚥」を念頭に置いてみるとよいかもしれません。

特に最後にお話したような経験、医療者の方であれば 少なくないのではないでしょうか。
次回は、「誤嚥」を疑う発熱のパターンを考えます。